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矜持
2007/07/21(Sat)
ガンを告知されて一番最初に思い出したのは、平成10年に胃癌で亡くなった父の事だった。

風邪ひとつひいた事のない、健康そのものだった父が「胃の調子が悪い」と診察を受けたのは平成9年の年初だったと記憶している。
スキルス型の胃癌で、見つかった時には既に末期で手の施しようがなく、余命は半年と告げられた。

突然残酷な事実をつきつけられ、母と私は父にどうしても真実を告げるが出来ず、「胃腸炎だ」と偽り父の前では笑顔を見せながらも、陰ではいつも2人で泣いていた。
でも、その嘘もそう長くは続かなかった。

とある日父は、母に静かな声で問い掛けたのだそうだ。「何か隠している事があるだろう」と。
母が耐え切れず泣きながら本当の事を言うと、父は「わかった。」と頷き、こう続けた。

「今まで悲しい思いをさせてすまなかった。隠しているのは苦しかっただろう。病気の事は、事実としてきちんと受け止める。医者が半年しか生きられないと言うのなら、俺は頑張ってその倍生きるから、安心して欲しい。そして、残り少ない時間は、家族仲良く過ごしたい。いがみ合いながら過ごしても半年、笑って過ごしても同じ半年なら、俺は笑って暮らしたい。」

父は言った通り、それから半年に加える事八ヵ月の時間を生きた。
そして、最初に言った通りに最後まで「笑って」過ごした。

最後の3ヵ月ほどは食べ物を一切口にする事も出来ず、どれほど辛かっただろうと思う。
それでも泣き言や恨み言を言って困らせる事など一度も無く、最後まで家族や周囲に感謝を忘れず静かにこの世を去って行った。

子供の頃から声を荒げて怒られた事など無いし、叱る時も私の言い分を聞いてから諭す父だったので、穏やかな人だとは思っていたし、家族思いなのも知っていたが、あれほど強い人だとは思っていなかった。
その強い人の血が、私にも流れている。

だから、ガン告知を受けた時、どんな事になっても──もしも良くない結果が待っていたとしても、父に恥じる事だけはすまいと思った。

事実を事実としてしっかりと受け止め、騒がず、何者も恨まず、泰然と。

心よ、強くなれ。
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